デイジー

「ほふいえば、でふぇた?」

…口いっぱい頬張って喋んなよ。啓太…


「ふぁにふぃってんかわふぁんねぇふぉ!」


答える俺も頬張り過ぎて何言ってるかわかんねぇか……


「喋るなら飲み込んでからにすれば?」


浩輔の指摘もごもっとも。

俺たちは水でお好み焼きを飲み込むと、もう一度ゆっくりと向き合った。


「で?書けたの?」


あっ、そういうこと。


「うーん……言葉の端っこはつかんだ気がするけど、まだ。」


ノートに並んだ言葉をどんな風に繋げばいいか。

今日は徹夜になるかな?


「そういうお前はどうよ?」

「俺?書けたよ~!ほら、俺ってば天才だから?」



ほんっと、こういう時の啓太は腹が立つ。

しかも!スッゴイいい笑顔!

な、殴りてぇ~!


「今殴りたいって思ったでしょ!何でも顔に出ちゃうんだから。」


うっ……バレてた!?

啓太のこういうところ、ほんっとムカつく。

あー!腹立つ!ムカつく!


早く食って、さっさと書き上げてやる!


………なんて思ってたら、別のところから爆弾が落ちてきた…



次から次へお好み焼きを焼いていた浩輔が、放った一言に、俺たち全員の手が止まった。



「そう言えばさ〜、社長が、今度写真集みたいの出すっていってたよ〜」







「「「写真集だぁ〜?」」」



写真集ってあれか?

グラビアアイドルや女優が水着着て、浜辺とかで撮ってる、あれか?

俺ら男だぞ!

しかも、バンドマンだぞ!!

なんで写真集?

俺ら、どうすんだ?

水着着て楽器でも持つのか?

…っつーか、俺らの写真集なんて、買う奴いるのかよ!

社長、何考えてるんだよ!


「なんかね〜、社長の話じゃ、ライブのオフショットだったり、俺らの普段がわかるようなやつだって言ってたよ〜」



オフショットっつったって、今まで何度か撮ってたじゃねぇか。

普段の様子っつったって、こうやってお好み焼き食ったり、バカやったり、練習したり……

そんなのみたい奴なんているのか?


……まあ、俺らのファン、女の子が多いけど。




「面白そうじゃん!浩輔、社長になんて言ったの?」



社長と考えが似てるのか、こういうのが好きなんだよな。啓太……

すげー乗り気になってやがる。