俺たちと親、それに社長も入れて何度も話し合いをして……

『うちでやってみないか?』

あの言葉から半年…

やっと全員の親の許しがおりた。

高校は卒業すること。

ダメだと思った時点で辞めること。

あれこれ条件付きだったけど、そうやって手に入れた夢へのチャンスだった。


でも、事務所と契約したからって、すぐにデビューできるわけもなくて。

レコーディングやMVの撮影の合間に、ボイストレーニングや、先生について楽器の演奏法のトレーニングを受けることになった。

特に浩輔は、みっちりしごかれてたっけ。

ギターやベースは親父が教えてくれたけど、ドラムはほぼ浩輔の独学。

『変な癖が付いてる』って、かなり直されれた。

もちろん俺らも直されたよ。

ボイトレの先生が厳しかったな~。


『基本がなってない!』

とか言われて……

そういや、俺も啓太も、あの先生から誉められたことない。

今でも時々事務所で顔会わせるのに、会えば『基本を忘れてる!』って。


まあ、そんな厳しい先生たちのお陰で、契約から半年後。

高校の卒業を待ってからのデビューが決まった。

…………といっても、大きな事務所と違うから華々しいデビューとは違い、テレビはおろか、ラジオも呼んでもらえず。

ショップを回って、ライブハウスを回って……

ほんと、地道な活動。

やってることはアマチュアの頃とそう変わりがない。

だけど、それでも夢へ近づけたことが嬉しくて、何をやってても楽しかった。



デビューして2ヶ月。

初めてのメディアはローカルのラジオ番組。


たった10分でも、すごく嬉しかった。

生放送だから余計に緊張して、何話してるんだか訳わかんなくなって。

それでも、自分たちの曲が流れて、パーソナリティの人が褒めてくれて……

リスナーから届くメールやファックスの反応も上々。

『頑張って』っていう言葉が嬉しくて、
無理を言って譲り受けたメールやファックスをみんなで何度も見直した。