それが、いつのまにか俺たちの夢になって……

誰が言い出したんだ?


『じいさんになっても続けよう。』

『世界中の人が、総理大臣の名前は知らなくても、俺たちの音は知ってるってくらいメジャーになろう!』

って……


啓太……だったかな?


そんな大それた夢をぶちあげて、高校生の俺たちは児童館から路上に、それからライブハウスに場所を移して、ただひたすら演奏し続けた。

もちろん、ライブの間に事務所にデモテープを送ったりもした。

ほとんど相手にされなかったけど……

それでも凹まなかったのは、ライブの度に増えるお客さんと、そのお客さんの笑顔があったから。

初めは誰も足を止めてくれなかった。

ライブハウスに来てくれる客のほとんどが対バン相手目当てだったこともあった。

それでも次第に俺たち目当ての客が増えて……

ハウスでワンマンさせてもらえるようになるまで1年くらいかかったかな?

その間、何もなかったわけじゃない…

殴り合いのケンカになったこともあった。

腫れた顔で道に立って歌った日もあった。

毎日学校が終わったらバイト行って、機材背負って道に立って、週末はハウスで歌って…

それが嫌になったことも、親や学校と揉める原因になったこともあった。

でも、誰も『辞めよう』って言わなかった。

言わなかったから、今の俺たちがいる。

諦めなかったから…

どんなに辛くても、現実に負けそうになっても諦めなかったから……



高2の冬、雪がチラチラ舞った週末の夜。

『うちでやってみないか?』

今の社長がそう声をかけてくれた。

立ち上げたばかりで、所属タレントもいない。

そんな小さな事務所に、俺たちは人生をかけた。

もちろん親は大反対。

あ、俺以外のね。

俺の親父は音楽関係で飯食ってるし、割と放任で、『世間に迷惑かけなきゃ好きにしろ』って感じだから。

他の奴らは必死に説得してたな。

親に泣かれても、『勘当する』と言われれも、夢を叶えるチャンスをもらったんだ。

諦め切れるわけがなかった。

たとえどんなに小さくても、それが夢への大きな足がかりだったから……

足掻いて手に入れたチャンスだから…