デイジー

「どうする?食ったら練習する?」

「するでしょ~!」


俺の皿から半分持って行ったもんなんか、あっという間に腹の中に収めた啓太がニコニコ笑ってる。

ニコニコ?……いや、ニタニタ…だな…

何か面白いことでも思いついたかな?


「じゃあ、俺先に行ってる…」

流しに食器を突っ込んだ光希が練習室に降りていく。

その後ろ姿が前より痩せて、細い体がもっと細く見える。

『ダイエット?』

そんな風に聞いてみたけど、ダイエットなんてする必要ない位細い背中。

これ以上細くなったら、ベースも持てなくなりそうだよ。


その細い背中に、啓太が声を掛ける。


「光希~、俺らがいるじゃん?何があっても、俺らは一緒だから~。」


何のことかわからないような、啓太の言葉。

でも、光希にはその意味がわかるのか、ピクッと少しだけ揺れて、でも振り返らずにリビングを出ていく。

片手をあげて……


こういう時、やっぱりリーダーなんだなって感じる。

いつも笑ってて、誰かにじゃれついてて、何にも考えてないように見えて、肝心な時は頼りになる。

多分俺じゃ気がつかないし、気づいたとしても、うまい言葉をかけることもできなかった。

啓太だから…俺たちはうまく行ってるのかもしれない…




「…さあ、俺たちも行きますか?」


俺たちも立ち上がり、各々食器を流しに突っ込む。


さあ、これから長くて短い、俺らの夜が始まる。





「……練習終わったらジャンケンだね…。」


ああ………食器洗いね………