「という訳ですのでウィル様、着替えてください。汗をかいていますので、洗濯をしますよ」
「えっ! えええええ」
次の瞬間、ウィルの悲鳴が響き渡った。複数のメイド達に襲われ――もとい着替えを手伝ってもらい、何とか準備が完了した。これは屈辱のなにものでもなく、相当機嫌が悪かった。
だが叫んだ影響により、下がっていた熱が上がってしまう。それにより、ウィルは倒れる寸前であった。
しかし、メイド達には関係なかった。二人をくっつける為には、多少の障害は物ともしない。
「ウィル様、歩いてください」
「何で、こうなるのかな」
「深く考えないでください」
「そうです。気にしてはいけません」
ある意味で、本音であった。鈍感のウィルに恋愛について語って聞かせたところで、理解などしてくれない。それどころか混乱し、ますますおかしな方向に行ってしまうだろう。そうなってしまえば、二人をくっつける作戦が終わってしまう。それだけは何がなんでも避けなければならず、メイド達は必死であった。
そのことが影響してか、ウィルが肺炎であろうと厳しく当たる。そしてそのまま部屋の外へと出すと、自分達は部屋の掃除を開始した。
「ウィル様?」
追い出されたことに、ウィルは不機嫌な表情を浮かべる。まだ、肺炎は治っていない。それに病気になったということで、アルンに呼ばれた。しかし「両親が来る」という理由で、追い出されることに。
両親に会わないで済むということに関しては喜べるが、病気の身体を引きずり家に戻るのは正直辛いことだ。寒空の中ディオンに乗って飛ぶのは、病気を悪化させることに繋がる。
「ユフィールも来るんだよね?」
「いけませんか?」
「いけなくはないけど……」
この状況に置かれても、ウィルは自分が置かれている立場を理解していない。普通の人間であったら「ユフィールに世話になる」と言われた時点で、ある程度のことはわかるだろう。
だがウィルにしてみたら、それ以上のことは考えられない。その為ボリボリと頭を掻きながら、溜息をついていた。
「なら、行こうか」


