ユーダリル


 その言葉に、メイド達は笑みを浮かべていた。多少なりとも気になりだしたということは、恋愛の見込みが出てきたという証拠。そのことにメイド達は互いにめくばせをすると、ある計画を実行に移すことにした。

 それは、ある意味で強制執行。ユフィールは辞退したが、メイド仲間にしてみたら面白くない。

 ウィルは肺炎を起こして世話が必要なのだから、この場合はユフィールが適任だろう。それに、例の両親が帰ってくる。この状況で出会ったら、ウィルはますます具合が悪くなってしまう。

 実のところ、アルンもそれを心配していた。その為両親が来ている間、ウィルを避難させることが決定している。

「ウィル様、旦那様と奥様のことですが……」

「それを言わないでほしいな」

「いえ、悪いことではありません。旦那様と奥様が来ている間、避難をして頂きたいとアルン様からのご命令が」

「そうなんだ」

「ウィル様が、心配なのですよ」

 このことに関して、ウィルは特に反応を見せなかった。だが心の中ではホッとしているのだろう、表情がいつもより穏やかであった。それを見たメイド達は互いの顔を見合うと、満面の笑みを浮かべながら「ユフィールが世話してくれる」と、伝えた。まさにそれは、寝耳に水。

「あれ? うつると言っていなかった?」

「嘘です」

「はい。こうでも言いませんと、ウィル様は嫌がると思いまして。ですので、嘘をつきました」

 肺炎によって身体が弱っていなかったら、間髪いれずに怒っていただろう。だが今は、その気力さえ湧かない。ウィルは薄味のスープを飲み干すと、寝台に横になる。しかしその動きさえ、メイド達は許さなかった。

「起きてください」

「寝かしてほしいな」

「それは、できません。ユフィールが来ます。ですから、起きてください。寝ることは、許しません」

 その言葉が示すようにユフィールの唸り声と、何か重い物を引きずるような音が聞こえてきた。そして、扉がゆっくりと開く。すると私服姿のユフィールが、オドオドとした態度で入ってきた。

「準備ができました」

「はい。ご苦労様」