そして高い薬と栄養がある食材を揃え、早く治るように無駄に強い権力を行使していく。お陰で徐々にだがウィルの熱も下がりはじめていたが、油断はできない。だからメイド達に、24時間体制で看病に当たらせた。
しかし、誰も文句を言うものはいない。それは、アルンの命令というわけではなく「ウィルが好きだから」という個人的な感情があったからだ。だがそれを知らないアルンは、メイド達が命令を聞いたと喜ぶ。そしてそれに気付いているセシリアは、溜息をついていた。
そう、アルンのみが何も知らなかったのだ。
「ウィル様、いかがですか?」
「薄味だね」
「病人ですから、濃い味付けは身体に悪いです」
「そうです。ウィル様のことを思ってのことです。ですので、このままの味付けで食べてください」
頬を赤く染めながらスープを啜るウィルに、メイド達は厳しい言葉を言っていく。だが其処には深い愛情が含まれており、早く元気になってほしいと大勢が願っていた。無論、ユフィールも同じ。だがそのユフィールは、ウィルの側にいない。今回は別の仕事が与えられ、そちらに専念していたのだ。
「そういえば、ユフィールは?」
「他の仕事をしています」
「あの子は、風邪をひきやすい体質なんです。ですからウィル様の看病には、向かないということです」
「そうなんだ」
本当なら、ユフィールがウィルの看病をするところだろう。しかし「うつる」という理由から、除外されてしまった。それは、建前の理由。本当のところは、ユフィールの本音を察してのことだ。
ウィルの看病をしないか訊ねた時、ユフィールは赤面をしていた。それはいつもの「お世話」とは違う接し方をしないといけないからだ。それに恥ずかしさの影響でトラブルを発生させたら、更に印象を悪くしてしまう。そう考えたユフィールは、自ら辞退を申し出た。
「彼女が心配ですか?」
「別に。ただ、ユフィールが世話をしてくれることが多いから。それで、気になっただけだよ」
「そういえば、そうですね」
「うつるのなら、仕方ないね」


