ユーダリル


「言いたいことがあるのなら、言ってほしいな」

 それは、困ったような口調だった。それにより告白しづらくなったユフィールは、落ち込んでしまう。もしこの現場をセシリアが見たら、何と言うだろう。第一声は「鈍感」に違いない。

「何か、悪いことをしたかな?」

 その質問に対し、ユフィールは首を横に振る。だが現に、ウィルは悪いことをしている。鈍感により、ユフィールを傷つけた。この罪は大きく、他のメイド達から一斉攻撃があっても文句は言えない。

 ユフィールは気持ちを落ち着かせる為に深呼吸をすると、自分自身に気合を入れる。そして、一気に想いをぶつけることにした。

「私は――」

 しかしその時、中庭からディオンのくしゃみが聞こえてきた。どうやら風邪をひいたらしく、続いて鼻を啜る音が聞こえてくる。滅多に風邪を引かないディオンに、ウィルは溜息をついてしまう。

「寒い中で、寝ているからだよ」

 雪が舞い散る中で、平気な顔をして昼寝をしていた。どうやらそのツケが回ってきたらしく、何回もくしゃみをしている。それに今まで我慢をしていたのだろう、時折おかしな堰も聞こえてきた。そのことにウィルは仕方ないという表情を見せると、ディオンのもとへと向かうことにした。

「あ、あの……ウィル様?」

「何?」

「先程のことですが……」

「ああ、後で聞くよ」

 それだけを言い残すと、そのまま部屋を出て行ってしまう。こうなると独り取り残されたユフィールは、目元に涙を浮かべるしかない。そして、改めて知る。この恋愛の難しさを――


◇◆◇◆◇◆


 数日後、ウィルの懸命な看病によりディオンの風邪は完治した。今では元気に大空を飛び回り、健康の素晴らしさを全身で謳歌する。

 だが、ウィルは違っていた。寒い中での看病と肉体疲労が重なり、今度はウィルが風邪をひいてしまった。それも、寝台で横になる始末。

 それに日頃の我慢体質が影響してか、悪化するまで誰にも言わない。その為、肺炎を起こし倒れてしまった。それを聞いたアルンはウィルを実家に連れ戻し、メイド達に手厚い看護をさせていた。