ユフィールは、何も言わない。そのことに首を傾げるウィルは、どうしてそのようなことを聞くのか疑問に思う。だがそれは、ユフィールの優しさが関係していた。そう、姉より先に結婚をしていいのか。
別に、結婚に順番というものは関係ない。しかし根が優しいユフィールは、それができなかった。それに、姉にも幸せになってほしいと思っている。しかし、ブラコンアルンを崩すのは至難の業。
「今、結婚する?」
「えっ! そ、その……」
「冗談」
その言葉に、ユフィールの顔は真っ赤に染まってしまう。
たとえ冗談であろうと、明確に「結婚」の二文字を言われたことはない。それにより動揺し、心臓が激しく鼓動していった。ユフィールの恋は、障害が多い。やはり、問題はメイド達だろう。
彼女達は一見協力しているように見えて、実は遊んでいる。それにより、いい雰囲気を完全にぶち壊してしまっている。もしそれが存在していなかったら、二人の中は今以上に進展しているのは間違いない。
要は、進展させようとして後退させてしまっているのだ。それにウィルとユフィールも、彼女達の存在を時折「煩い」と思うこともあるが、口に出すのが恐ろしいので何も言えない。
「ウィル様?」
「何?」
「えーっと……」
頬を赤く染めながら、懸命に言葉をつむぎ出そうとする。だが発せられる言葉はしどろもどろになってしまい、上手く聞き取れる内容ではなかった。その為、ウィルは何度も聞き直す。
「私は……」
「何か、困ったことでもあった?」
「ち、違います」
「なら、何かな?」
ユフィールは、その質問に素直に答えることができなかった。「結婚しましょう」この言葉を言えば済むのだが、緊張と恥ずかしさが混じりあい言葉として表せない。そのことにウィルは肩を竦めると、落ち着いて話すように進める。だがユフィールは、ますます顔を赤らめていった。
何も言ってこないユフィールに、ウィルは溜息をついていた。この場合、相手が赤面をしている時点で気付くものだろう。ウィルは、なかなか話さないユフィールにご立腹であった。


