だがこの言葉には、裏が存在した。それは「セシリアと結ばれれば、煩くなくなる」という、切実な願いが篭められていた。しつこく監視を続けるアルンから逃れられるのなら、これほど喜ばしいことはない。
それに、結婚は悪い意味ではない。寧ろセシリアは、結婚を望んでいた。ただアルンが踏み出さないだけで、するという気持ちがあればいつでも結婚できる。要は、ブラコンが邪魔なのだ。
「アルン様は、ご結婚なさるのですか?」
「そう、盛大に祝ってあげないと。なんせ、兄貴の結婚式だよ。客人は、沢山来るだろうし」
「おい! まだ、それは……」
「嫌いなんだ」
「嫌いとは、言っていない」
強気な態度のウィルに、アルンが戦いていた。いつもとは違う状況に、混乱してしまう。普通ならアルンが適当にゴリ押をして終わるのだが、今回はその方法を用いることはできない。
ウィルは、確実に成長していた。別の方法を考えないといけないのだが、何も思いつかない。
「何か、おかしな物を食ったか?」
「いや、別に」
「お前が結婚に拘るとは、思ってもみなかった。いつかは、結婚しようと思っている。しないわけにはいかない」
「それなら、早くてもいいと思うけど」
これからの生活スタイルがかかっているウィルだけあって、言葉には力があった。そのことに形勢不利と判断したアルンは、そそくさと退散することにした。はじめてアルンに勝ったウィル。その表情は晴れ晴れとしており、相当嬉しかったのか小さくガッツポーズを見せる。
「ウィル様は、ご結婚に拘っているのですか?」
「何で?」
「いえ、そのように思っただけです」
「しないのなら、してもいいよ」
その言葉に、ユフィールは過剰に反応を見せた。そして一気に、顔面が紅潮していくのがわかった。
ウィルとユフィールの年齢は、16歳。結婚を望めば、今すぐに結婚できない年齢でもない。しかしウィルにしてみれば、まだまだ若いという認識しかなかったので、ユフィールの言葉に悩む。
「ユフィールは?」


