ユーダリル


 それは必ずといっていいほど、アルンの長時間の愚痴が待っている。その為、ウィルは愚痴に備えて早く逃げ出してしまうのだ。だがどちらにせよ、ウィルが良い思いをすることはない。

「これを読め」

「それなら、読んだよ」

「後からまた、届いた」

 スーツの内ポケットから取り出した手紙を受け取ると、それを読みはじめる。その瞬間、ウィルの表情が変わった。

 遊びに行くよ。

 書かれていた一行の文字に、ウィルは思わず手紙を丸めていた。そしてそのままゴミ箱に捨てると、アルンを睨みつける。それは珍しい行動であったが、アルンはそれに対して何も咎めようとはしない。

 それどころかアルンも同じことを考えているのだろう、見る見るうちに顔が青ざめていった。

「……兄貴」

「歓迎をしてやらないと」

「絶対に、嫌なことを考えている」

 たとえ相手が血の繋がった両親であろうとも、アルンは他人と同様の扱いをする。それによりどのような歓迎方法を取るかは、予想できた。そして確実に、ウィルがとばっちりを受ける。

 そのことに、ウィルは嫌な顔を見せていた。するとそのやり取りを聞いていたユフィールが、横から口を挟む。

 それはたいした内容ではなく、ユフィールにしてみたら予定を聞きたいだけであった。しかしアルンにとっては、大事に等しい。弟との会話を邪魔されたと判断し、ユフィールを睨みつける。

 弟を取る人物に、容赦などしない。

 アルンは暫く睨みつけていると、徐に口を開く。

「後で伝える。今、聞く必要はない」

 敵意むき出しの声音に、ユフィールは震えながら頷く。アルンにしてみたらそれは、障害となる者を排除する行為であった。しかしウィルにしてみたら、メイドへの八つ当たりにしか見えない。

「兄貴、みっともない」

「どういう意味だ」

「父さんと母さんが嫌いだからって、八つ当たりはいけないと思う。何て言うか、兄貴らしくない」

 その台詞は、アルンの心を抉った。