逞しいとしか、言いようがない。
「女は……特に母親は、強い生き物です。ウィル様のお母様も、強い女性だったと思います」
「そうだと……思います」
聞いた話によるとウィルの母親は、悪阻を気合と根性で跳ね飛ばしたという。またお腹に子供がいるというのに、トレジャーハンターの仕事を普通に行っていたらしい。それも、ユーダリル中を駆け回っていた。そのような過激な運動をして、よく子供に影響がなかったものだ。
一歩間違えれば、流産していた。そうすれば、ウィルはこの世に誕生していなかった。いや、ウィルだけではない。その前のアルンも含まれる。今思えば、母親の行動は大変危険だ。
それを止めようとしなかった父親も父親であるが、言ったとしても止まったとは思えない。何せ、行動力に関しては天下一品。大人しいというイメージはない。
「貴女のような方が、母親なら良かった」
「光栄です。ウィル様が、私のことを――」
「ああ! ウィル兄ちゃん、母ちゃんを取るな」
今まで黙っていた少年が口を開き、母親に抱き付く。本気で取られると思っているのだろう、真剣な目でウィルを見つめてくる。無論、本気で言ったわけではない。しかし、冗談でもない。
「あらあら、お兄ちゃんになる子が」
「だって、母ちゃんが」
「ウィル様は、冗談で言われたのよ」
「本当?」
恐る恐る尋ねてくる少年に、ウィルは頷き返す。流石に子持ちの親を奪うわけにはいかない。
それにそのようなことになったら、本物の母親が何と言うか。小言は、間違いなく言われる。
何より、アルンがどのように思うか――母親に関しては特に何も言っていないが、内心はウィルと同等の考えを持っていたりする。それは、お腹の中で命の危機を体験したからだ。
「良かった。母ちゃんは、僕の母ちゃんだ」
「ウィル様。母親は皆、同じです」
そう言われても、ピンとこない。それは、何をもって同じと言っているというのか。大きなお腹のことを示しているのか、それとも別の意味合いなのか。ウィルは腕を組むと、悩んでしまう。
ウィルはその答えを求めるも、それが語られることはなかった。


