「ディオンも謝る」
「いえ、構いません」
「ですが……」
「ウィル様の機嫌を損ねることを、この子が言ったのでしょう。そうでなければ、飛竜が怒ることは……」
言っていることは、的を射たものであった。しかしディオンが暴れたことには、大きな原因がある。無論、少年はそのことを知っていたが、母親の方はそれを知らない。あれは、姉弟の間で交わされた会話だからだ。
ウィルは、何処か納得がいかないところがあった。相手の迫力に負け、首を縦に振ってしまう。
相手は、アルンのブラコンを恐れている。だが、ウィルも同じようなことを考えていた。アルンは、白黒をハッキリする性格。悪いことをしたら素直に謝るという、考えの持ち主だ。
傍から見れば、素晴らしい考え。だが、本人がそれに等しいとは限らない。時として損得で動き、中には私怨が混じる時もある。そのようなことがある為、まず身の安全を図らなければならない。
「それでしたら、後で怒っておきます。それと話は変わりますが、いつ子供が生まれるのですか?」
「あと、半月みたいです」
「妊娠すると、お腹が大きくなるのですね。本当に、凄いな。まじまじと見たことないから、驚きが大きいよ」
「ええ、この中に子供が入っています」
「うーん、不思議」
身重の女性を見たことのないウィルは、大きな腹に興味を持つ。張った腹をポンポンと軽く叩くと、不思議な視線を向けた。このような場所に子供がいる……正直、信じられなかった。
「重くないですか?」
「ええ、少しは。でも、平気です」
「女の人って、凄いですね」
ウィルにしてみれば、このような体験はしたいとは思わない。それはウィルだけではなく、男なら誰もが思うことだろう。 十月十日(とつきとうか)の長い生活など、行動力があるウィルにしてみたらしんどい。
男として生まれてきたことを、感謝してしまう。ウィルにしてみれば、腹が大きくなるということは耐えることはできない。
逆に、女の凄さを思い知ることになる。このような大きなお腹をしながら、普通に生活を送っているのだから。


