マフラーを眺めながら、考え込む。やはりここは、誰かに頼むしかない。ユフィールは編み掛けのマフラーを抱えると、部屋から出て行く。そして、メイド達が使用している休憩部屋に向かった。
扉を開けた瞬間、メイド達の視線が一点に集まる。一斉に集まった視線にいたユフィールは驚き、固まってしまう。すると、メイド達の表情が変わった。そう、全員が満面の笑みを浮かべていた。
「わからないのなら、聞いていいのよ」
「そうそう、私達は味方よ」
「さあ、何でも言ってね」
次々と発せられる言葉は、ユフィール何をしに来たのか知っているものであった。ウィルにマフラーを編んでいることは誰にも話していないが、屋敷で働いている者なら誰もが知っている。
理由は、ユフィールの態度に関係していた。頬を赤らめながらマフラーを編む姿。この姿から「ウィルの為に」という答えが、導き出される。自分で使用するのなら、頬を赤らめることはない。その為、周囲に言わせれば「わかりやすくて、可愛らしい」となってしまう。
「私達は、何をすればいいのかしら?」
「無理難題でも、ある程度までなら聞いてあげるわよ」
メイド達は一斉に立ち上がると、ユフィールの前に歩いて行く。そしてユフィールの前を取り囲むと、不適な笑みを浮かべた。ここまでくると個人の恋愛ではなく、完璧にユフィールの恋愛を楽しんでいる。
「こ、これの……」
「これの?」
ユフィールの言葉のひとつひとつに反応するかのよう、メイド達は声を揃える。普段見ることのない仲間の様子に、周囲に視線を走らせ一人一人の顔を見ていく。その瞬間、身の危険を感じた。
「な、何でもありません」
「あら、何かあって来たのでしょ?」
「それは、大丈夫です」
まるで、誘導尋問をされているようであった。このようなことに慣れていないユフィールは、どう返していいのかわからなくなってしまう。選んだ行動といえば、この場から逃げ出すことであった。
網みかけのマフラーを両手で抱えると、ユフィールは仲間達に頭を下げそのまま部屋から逃げ出してしまう。その姿にメイド仲間の一人が、舌打ちをした。どうやら面白いものを逃がしてしまい、悔しいようだ。恋愛を応援するのは建前で、要は楽しければ何でもいいらしい。


