しかし、好意を無にするわけにはいかない。それに面白半分で作ってきたわけではなく、ウィルに美味しく食べてもらおうと思い作ってきた。受け取らないとなると、ウィルが悪人になってしまう。
「何で、ピーマンなんだ?」
「そりゃー、子供が嫌いな野菜だからだよ」
「な、なるほど」
男曰く「野菜嫌いを治す為に作ったお菓子」だという。確かに、ピーマンを苦手とする子供は多い。あの独特の苦味が、その所為だろう。中には、その苦味が美味いという人もいる。
ウィルがピーマンを嫌いな理由は、前者にあたる。あの苦味さえなければ普通に食べられるのだろうが、今では見るのも嫌うほどだ。だがそれを知らないロバートは、プディングを食べてほしいと進めてくる。
これは、地獄としか思えない。まさか、このようなことでピーマンを食べるとは――これは、ユフィールから逃げ出した祟りなのだろうか。ウィルは本気で、そのように思ってしまう。
「後で食べるよ」
「できたら、感想を聞きたい」
「う、うん」
男は満面の笑みを浮かべると、それだけを言い残し帰っていってしまう。残ったのは、ピーマン入りのプディング。このまま捨ててしまおう――だが、それはできない。好奇心のままプディングの一掴みすると、そのまま口へ運ぶ。その瞬間、ウィルの顔が激しく歪む。
砂糖で甘みをつけてあるが、ピーマンの味が消えたわけではない。特に嫌いな食べ物の場合、味覚は敏感。一個のプディングにどれだけのピーマンが使われているかわからないが、食えたものではない。
「ディオンに食わせるか」
ディオンは好き嫌いなく、何でも食べる利口な飛竜だ。いや、ディオンの場合は食べることが大好き。信頼しているウィルが与えた物なら、何でも口にする。そうと決まればディオンのもとに向かうのみ。ウィルは箱を抱えたまま、ディオンが翼を休めている建物の裏手に回った。
雪が微かに降り積もっている中、ディオンは気持ち良さそうに寝息を立てていた。寒さを全く感じないのだろう、その姿は暖かい午後の日差しを浴び昼寝をしている姿と一緒であり、顔は微笑んでいた。ウィルはディオンの側に寄ると、全身に降り積もった雪を叩いていく。


