ユーダリル


「どのような人物ですか?」

「元、俺達の仲間だ」

「はあ?」

「以前、お前が喧嘩を吹っ掛けた相手だ」

 その説明に、記憶が鮮明に蘇った。すると何かを思い出したのだろう、ウィルはポンっと手を叩く。

 しかし、額には汗が滲んでいた。例の人物――ロバートを思い出したと同時にピーマンが脳裏を過ぎってしまい、気分が悪くなってしまう。ウィルは、ピーマンの見るのも嫌いだった。

「早く行けよ」

「ところで、以前は仲間であった相手に“客”と呼ぶのは、どうかと思いますが。何か、意味があるのですか」

「ふっ! そのような相手は、俺達にとっては客人だ。過去のことなど、関係ない。わかったか」

「わ、わかりました」

 物凄い圧力に、ウィルは圧倒されてしまう。アルンに似た圧力を掛けるこの人物は、ギルドマスター。ユーダリルで働くトレジャーハンター全員を顎で使える、とんでもない人間だ。

 ウィルがあのアルンの弟であろうと、ギルドマスターにとっては関係なかった。「権力者に屈服しない」それが彼のポリシーのようなものであったが、ウィルはギルドマスターの裏の顔を知っている。それは、アルンに土下座をしていたことを――それは、口が避けても言えない。

「揉め事は、外でやってくれ」

「安心してください。何かがありましたら、一撃で終わらせます。相手を気絶させれば、済みますので」

「そうか。頼むぞ」

 物騒な発言を軽く受け流すと、ギルドマスターはそれだけを言い残し部屋から出て行った。ロバートは、どのような理由で訪れたというのか。訪問の理由が掴めないウィルであったが、仕方なく会うことにした。




「何のようだ」

 ウィルは急に訪れたロバートを見つめつつ、低音の声音で用件を聞きだす。不機嫌な感情が全身から滲み出る姿にロバートはたじろいでしまうが、コホンと咳払いをし冷静さを取り戻そうとする。だが、声音は震えていた。明らかに、ウィルを恐れているのがわかった。