勿論、逃げ出したい気持ちがいっぱいで――
工房エリアに到着したウィルが最初に向かったのは、鍛冶を専門に行なっている家であった
其処でウィルが頼むのは、武器の手入れ。
他のアイテムの手入れは慣れているが、これだけは専門家に頼まないと自分が怪我してしまう。
その為、ウィルは鍛治専門の場所へ来た。
しかし、ディオンを建物の中へ入れるわけにはいかない。
ウィルは建物の外で待っているように言い聞かせると、自分は建物の中へ入って行く。
と同時に、軽い口調で挨拶をした。
「おっ! いらっしゃい」
ウィルの言葉に対し返事を返したのは、五十代前半の体格がいい男。
毎日のように鍛冶の仕事を行なっている為か両腕は丸太のように太く、火の前で仕事をしているので全身から汗が噴出していた。
「剣の手入れをお願いに来ました」
「それはいいが、時間が掛かるぞ」
「待ち……ですか?」
「仕事が立て込んでいてな」
男は仕事を止めると、タオルで汗を拭きつつウィルのもとへ近付いてくる。
そしてゴツゴツしている手をウィルの前に出すと、彼が持っている剣を渡すようにとひらひらと手を振った。
その言葉に鞘に納めてあった剣を差し出すと、男は剣を鞘から抜き出し刃の部分を真剣な目付きで見詰めた。
「刃毀れしているな」
「やっぱり」
「何かあったのか?」
「ちょっと切れ味が悪くて……」
「これでは、切れ味が悪い。そうだな、三週間後に来い。それまでには、仕上げておくから」
「わかりました」
口は悪いが、腕の高さは評判がいい。
それを知っているので、ウィルは素直に礼を言い剣を任せるのだった。
これで、鍛冶屋でやることは終わった。
ウィルは男に向かって頭を垂れると、建物の外へ出て行く。
その瞬間、待っていましたという雰囲気でディオンがウィルに擦り寄ってきた。
だが、じゃれ合っている場合ではなく、他にもいく場所がある。


