優しく接する。
ただ、これだけであった。
その何とも簡単な答えに、一瞬アルンは言葉に困ってしまう。
しかしきちんと受け止めたのか、一言「わかった」と、返した。
「兄貴、頑張れ」
「すぐには無理だ」
「でも、兄貴にしてみれば前進だよ。後で、義姉さんに報告しておこうかな。心配していたし」
「おい」
セシリアだけには報告して欲しくないのか、アルンからの素早いツッコミが返ってくる。
だが、本当に報告するわけではない。
今まで虐げられてきたことに対してのお返しというわけで言ったのだ。
しかし長年の経験で、これ以上は危ないと学習している。
その為、危険の一歩手前でアルンの部屋から急いで出て行ってしまう。
その一拍後に、アルンの怒鳴り声が部屋の中に響き渡った。
アルンの部屋から逃げ出したウィルは、メイド達の休憩室へ向かう。
勿論、彼女達は歓迎してくれた。
と同時に、メイド仲間のユフィールは元気でやっているかどうか尋ねてきた。
「助かっているよ」
「彼女は、真面目ですから」
「料理が美味い」
「私達が教えました」
彼女の言葉にウィルは、キョトンっとした表情を作る。
メイド仲間に料理を教えて貰っていたということは、初耳である。
しかしそこまでして料理の腕前を上げてくれるのは、実に有難い。
彼女の努力に、ウィルの頬が微かに赤く染まっていく。
ユフィールに対して深い愛情を抱いているが、今の話で更に愛情が深くなっていった。
だがメイド達に気付かれたくないので、平然と構える。
「ユフィールに、伝言をいいですか?」
「いいよ」
彼女達の伝言というのは、時々此方に戻って来て欲しいというものであった。
勿論、これには裏が存在する。
メイド達はその点を言葉に出さないが、ユフィールに女性として立派に成長してほしいので様々なことを教えたいのだ。
これも、ウィルとの幸せな未来に繋げる為に――


