「大丈夫だよ。加減はするから」
「いけません」
「僕達の敵だよ」
「敵でも駄目です」
いつものユフィールとは思えない強気な態度に、たじろいでしまう。涙を浮かべ見つめてくる姿に、ウィルは言葉を失い動揺を隠せない。その姿にロバートは、小声で「泣かした」と、言う。
痛い所を付かれたことウィルはロバートを睨み付けると、黙るように態度で示す。物凄い形相で睨み付けられたことにロバートは、下を向き沈黙してしまう。これ以上口出しをしたら、殺されてしまうと感じたのだろう。何だかんだで、アルンとウィルはそっくりだった。
一歩間違えれば――
「危ない芽は、摘み取らないと」
「それが悪に成長するとは、わかりません」
「そ、そうだけど……」
「止めて頂きませんと、ウィル様が嫌いな食べ物を毎回食卓に並べます。いえ、それだけの食事にします」
次の瞬間、ウィルの顔から血が引いていた。ウィルが苦手な食べ物、それはピーマンであった。嫌いな食べ物を克服という形でピーマン料理を並べたところ、ウィルは吹っ飛んで逃げたという。
そのことをメイド仲間から聞かされていたユフィールは、何か悪いことが起こった場合、それを言おうと決めていた。ウィルは、料理が作れないわけではない。しかし実家に帰郷した場合は自分で作るわけにはいかず、専門の料理人が作った料理を渋々ながら食べていた。
そしてピーマンが出された時は、半泣きになってしまう。
「い、いや……そ、それだけは」
「ピーマン出しますよ」
「……わかったよ」
こうなれば、素直に従うしかない。このまま我儘を言い続けたら、今日の晩御飯はピーマンのみの料理になってしまう。ウィルは溜息をつくと、足を退かしロバートを解放することにした。
「良かったですね」
開放されたロバートは、胸の前で手を組むと目を輝かせながら「女神様」と、言う。その姿に叩き倒したい衝動に駆られるウィルであったが、ユフィールがいるのでそれができない。もし叩き倒したら、ピーマン地獄に遭う。それも朝昼晩と、三食ピーマンのフルコースだろう。


