「トレジャーハンターを廃業したの?」
「し、していない!」
その瞬間「うっ!」と呻き声を発し、しゃがみ込んでしまう。どうやら叫んだことにより腹筋を使用してしまった為に、激痛が全身を駆け巡ったようだ。その姿に「病院に連れて行く」と提案してきたユフィールであったが、ウィルは頭を振りその必要がないことを伝えた。
「大丈夫。身体は鍛えてあるから、このくらいは平気だよ。それに兄貴と戦った場合、これだけで済まないし」
「で、ですが……」
アルンの強さは、ユーダリルで知らない者はいない。莫大な権力の他に、アルンは剣が得意なのだ。
その腕前は並みの兵士を凌駕し、連戦連勝というとんでもない記録を持っている。自己防衛の為に習ったというが、ここ数年剣を抜いたところを見たことはない。最後に剣を握っているところを見たのは、ウィルが剣を教えてもらった時。ウィル曰く「あの時は、地獄を見た」らしい。
(楽しんでいたからな)
アルンが剣を持っているだけで、相手が逃げ出すという噂がある。そのことを聞いた時は嘘だと思っていたウィルであったが、ロバートの怯えようを見ていると、本当に思えてしまう。
「……黒い悪魔」
「えっ! あー、兄貴のことか。そう言えば、そのように言われていたね。兄貴って、色々言われているな」
普段恐怖の対象として見ているアルンだが、このように言われると何だか気分が悪くなってくる。一応、血の繋がった兄弟。悪口を言われて、良い気分にはなれない。するとウィルは片足を上げると、建物の壁に音をたて足をつける。それも、お仲間さんの顔スレスレの位置に。
「兄貴に、恩を売っておくのも悪くないし……誰に、頼まれたのかな? 素直に言えば、見逃すよ」
ウィルは、爽やかな笑顔で脅しにかかる。やはり血は争えないのだろう、このように楽しんで相手を脅すやり方は、アルンそっくりであった。一方ロバートは口をつむぎ、懸命に圧力に耐えていく。
「喋らないのなら……」
ユフィールに紅茶の葉が入れられた紙袋を手渡すと、ボキボキと指を鳴らしはじめる。それを見たユフィールは嫌な予感がしたのだろう、ウィルが行おうとしていたことを寸前で制す。服を掴み、懸命に「駄目」と、訴え掛けてくる。だが、ウィルが受け入れるわけがない。


