「触っても……」
「いちいち聞かなくてもいいよ」
ウィルの言葉にユフィールは頷き返すと、両手で紙袋の中身――黒い膝掛けをペシペシと触る。
相当肌触りがいいのか、ユフィールの顔が徐々に緩んでいく。そして、ウットリとした表情に変化した。
「どうですか?」
キラキラと瞳を輝かせているユフィールに、ダニーが言葉を掛ける。彼曰く、この膝掛けは女性をターゲットに売り込もうと考えているらしい。その為、ユフィールの感想を参考にしたいという。
それを聞いたユフィールは念入りに膝掛けに触れていき、いい部分と悪い部分を探していく。
「えーっと、肌触りはいいです」
「ふむ。なるほど」
「ですが、ちょっと小さいです」
「小さい?」
「はい。もうちょっと大きい方が、使いやすかったりします。これでは、小さ過ぎますので」
ユフィールの言葉に、ダニーは何度も頷き納得する。確かに、彼女の言うようにサイズが小さい。今のサイズでいえば膝掛けというより、レストランで提供される四折りのナプキンのようだ。
的確な意見に、ダニーは更に質問を繰り返す。それに対しユフィールは、丁寧に感想を言っていった。
二人のやり取りを側で聞いているウィルは、とある疑問を抱く。このように意見を聞くということは、この膝掛けは完成品ではない。要は、未完成品をアルンに手渡すことになるのだ。
それに付いてウィルは指摘しようとしたが、手渡す相手は苦手としているアルン。義姉になったセシリアであったら考えてしまうが、実兄のアルンであったら未完成品でもいいだろう。
ウィルはユフィールとダニーに気付かれないように、明後日の方向に顔を向け怪しくほくそ笑む。
(強欲の兄貴なら、いいか)
有り余る金を使い、好きな物を世界中から掻き集めている。しかしアルンは、高い目利きを持っているわけではないので、完成品と未完成品の区別を瞬時に付けるだけの眼力は持っていない。この未完成の膝掛けも普通に受け取り、使用している可能性も高いとウィルは思った。


