「彼女は、特別だよ」
ダニーは、ユフィールを最強のメイドと勘違いしている。だが、それは仕方が無い。ラヴィーダ家のメイドの強さは、ユーダリルの中で有名すぎる。それに、数々の伝説も生み出している。
そのようなことが関係し、ラヴィーダ家のメイド=最強の女性という形式が生み出された。
しかし全員が全員、最強のメイドというわけではない。中には大人しい女性も存在し、その一人がユフィールだ。
ウィルの説明に、ダニーは納得したように頷く。そして逆に、その方が何処か安心するという。
ラヴィーダ家のメイドの全員が最強であったら、それはそれで恐ろしい。下手すると、メイド集団というより兵士の集団になってしまう。しかし、よく一箇所に強いメイドが集まったものだ。
この点に関してはダニーだけではなく、ユーダリルで暮らしている者達の大半が考えているといっていい。ある意味、七不思議のひとつに上げられる内容で、誰もが真相を知りたがっている。
だが、ウィルに尋ねたところで正しい解答が返ってくることはない。何故なら、メイドの採用を行なっているのはウィルではなく、アルンとメイド長リンダが関係しているからだ。
「ユフィールは、どうだった?」
「確か、普通に募集していました」
「普通……か」
彼女の言葉が正しいのなら、偶然同じキャラが集まったということになる。しかし、ここまで偶然が続くものか。長年の経験で、ウィルは裏側に何かが隠されているのではないかと予想する。
何せ、あのアルンが採用に関わっている。メイド長リンダが全権握っているとしたら、このようなメンバーが集まることはない。彼女は真面目で仕事熱心で、使用人全員からの信頼が篤い。何より、おふざけが嫌い。だとしたら、真相を握っているのはアルンしか考えられない。
「このようなことを言っては失礼ですが、理由はわかる気がいたします。これは、内緒でお願いします」
「それは、大丈夫」
アルンに対して愚痴を言ったらどうなってしまうかは、ユーダリルの全員がわかっている。しかし、人間ついつい愚痴ってしまうもの。ダニーは反射的に、ウィルに黙っていてほしいと頼む。ダニーの必死の頼みにウィルは、アルンがどれほど周囲に影響を与えているか身を持って知る。


