男の話では、普通の羊の毛より黒い毛の方が高く売れるという。保温性に優れ、寒い地方で暮らしている者に重宝されているらしい。だが、普通の羊の毛の倍以上の値段で取引されているので、黒い毛を使用した商品を一般人が購入するのは、なかなか難しいとされている。
しかし値段が高いのは、それだけではない。この羊の飼育は難しく、気温の変動で体調をすぐに崩してしまうのだ。その為、必然的に売買される羊毛の値段が高くなってしまうという。
「なるほど」
「私、はじめて聞きました」
「それ、同じ」
「ユーダリルで黒い羊を飼育しているのは、うちくらいですから。まあ、実験的な飼育だが」
「実験?」
意味深い言葉に、ウィルはすぐに食い付いていた。と同時に、羊の飼育の裏側に某有名人が関わっているのではないかと危ない想像をしてしまうが、幸いウィルの考えは違っていた。もし某有名人が関わっているとしたら、ウィルに何かしらの形で関わってくるからだ。
関わっていないことに、ウィルはホッと胸を撫で下ろす。だが、安心している場合ではない。男の「実験」の真相を詳しく聞きださないといけないからだ。それは、ユフィールも同じだった。
「牧畜での収入が、低いからです」
「ああ、そういえば……」
「だからです」
男の言葉に納得しているウィルの横で、ユフィールが首を傾げていた。どうやら、彼女は全く理解していないようだ。しかし質問する勇気が出ないのか、チラチラとウィルに視線を送っていく。
だが、ウィルは気付いてくれない。彼は男の方に視線を向け、会話を楽しんでいたからだ。すると必死の訴えに気付いてくれないことに、ユフィールは視線を送るのを諦めてしまう。
これも、長年の経験でウィルの性格を熟知しているからだ。その為、諦めも凄く早かった。
「どうしました?」
ウィルに気付かれなかったが、代わりに男がユフィールの訴えに気付いてくれた。そのことが嬉しかったのか、意を決し「家畜の収入が低い」の意味に付いて、尋ねていた。彼女の意外な質問に、当たり前の知識と思っていたウィルはキョトンっとした表情を作り、ユフィールの顔を凝視してしまう。


