「勿論です」
その考えは、ユフィールも同じだった。疑問は残っているとくすぐったくて、気分が悪いもの。それを早く解決したいという気持ちが強く働いているのか、二人の歩調が早くなっていく。
「えー、この牧場の主人は……」
牧場の出入り口に掛かっている、古びた大きい看板。其処に描かれている名前を見た瞬間、ウィルは誰が牧場の経営しているのか瞬時にわかった。そう、経営主とウィルは顔見知り同士だ。
これなら、話が早い。顔見知り同士なら回りくどい言い方をせずに、ストレートに質問ができるからだ。
それを聞いたユフィールは、自分の代わりに質問してくれるかどうか頼む。ユフィールは、どちらかといえば人見知りが激しい。屋敷で働いているメイド仲間は付き合いが長いので大丈夫なのだが、見知らぬ人の場合はきちんと会話することができない。だから、ウィルに頼んだ。
「いいよ」
「有難うございます」
「仕方ないよ。性格なんだし」
「……はい」
「ということで、ユフィールは隣にいればいいよ。で、おじさんは何処にいるのかな……っと、いた」
ユフィールと会話をしながらウィルは周囲に視線を走らせ、牧場の主人を捜していく。するとタイミングよく家畜を飼育している建物から、五十代前半の男が此方に向かって歩いて来た。
「やあ! ウィル君」
「お久し振りです」
相手はウィルの姿に気付くと、小走りで駆け寄り「ようこそ」と言わんばかりの表情を作った。
男は先程まで家畜が暮らしている建物の中の掃除を行なっていたのか、身に付けているエプロンが茶色に汚れている。そして微かに、家畜の排泄物の臭いが風に乗って漂っていた。
「今日は、何用で」
「いや、聞きたいことがあって」
ウィルの質問に男は頷くと、どのようなことを聞きたいのか尋ねてくる。流石、互いに顔見知り同士。特に怪しまれることなく、相手はウィルとユフィールが抱いていた疑問を聞いてくれた。そして、どうして黒い羊を飼育しているのか、経緯を含め丁寧に話してくれた。


