ウィルは、今のままのユフィールが気に入っているので、無理にセシリアに似せなくてもいいという。
彼の言葉が嬉しかったのか、ユフィールは恥ずかしそうに俯いてしまう。その可愛らしい姿に、ウィルはポンっと肩を叩く。そして、一言「出発」と言い、背中を軽く押すのだった。
「はい」
「案内は、宜しく」
「わかりました」
頷き返事を返すと、ユフィールはお気に入りの場所がある方法を指差し、案内するのだった。
幾つかの島を通り、数本の橋を渡っていく。途中、橋の上で強風に襲われるが、何とか踏み止まり難を逃れる。
最初は黙々と目的地に向かっていたが、それでは面白くないと思いはじめ、風景を楽しみながら向かうことにした。その時ユフィールは、綺麗に整えられた牧草地で面白い生き物を発見する。しかし彼女が知っている生き物は、このような色をしていない。その為、何度も首を傾げてしまう。
そして、その生き物が自分が思っている生き物で正しいかどうか、ウィルに質問を投げ掛けていた。
「あれは、羊……ですか?」
「羊?」
「あの黒くて丸い生き物です」
「ああ、あれは羊だね」
「羊の毛は、白だけじゃないのですか」
「白の他に、黒の毛を持つ羊もいるんだよ。だけど、ユーダリルで黒い羊は珍しいね。地上では、多いけど……」
ウィルが言うように、ユーダリルで黒い毛を持つ羊を飼育しているのは珍しい。大半が白い羊を飼育しており、ユーダリルで暮らしている多くの住民が「羊は白」と、思っている。
ユフィールも、その中の一人。その為ウィルに、どうして黒い羊が飼育されているのか尋ねていた。
だが、ウィルも「何故、飼育されているのか」に対して、正しい答えを言うことはできない。何せ彼も、ユーダリルで黒い羊が飼育されているのをはじめて知ったのだから。ウィルは暫く黒い羊を眺めていると、ユフィールに「見学に行く?」と、尋ねる。どうやらウィルも、飼育されている理由が気になるらしい。


