勿論、相手の表情が変化した。それを見たウィルは内心「やっぱり」と、思う。しかし二軒目の宿は、一軒目と違いいい返事をしてくれたのだった。何と、予約を受け入れてくれたのだ。
「助かります」
「いえ、此方こそ……」
「えっ!?」
意味ありげな言葉に、ウィルは反射的に聞き返してしまう。すると相手は、何もなかったかのように誤魔化していくが、逆にその行動が違和感を生み出す。お陰で、気まずい空気が漂いはじめた。
「えーっと、宜しく」
「わ、わかりました」
気まずい空気を払うように、ウィルが口を開く。それに釣られるようにして、相手は苦しい笑いをしていた。
その笑いに、ウィルは一瞬で先程の言葉の意味を悟る。そう、ラヴィーダ家の人物が長く宿泊すれば、想像以上の宿泊料が期待できるだろう。とても正直な反応に、ウィルは心の中で笑っていた。
一方ユフィールも言葉の裏側に隠された意味を悟ったのか、何処か困った表情を作っていた。
ウィルは何度か咳払いを繰り返すと、気まずい雰囲気を飛ばす。そして、用事が済んだので自宅に戻るという。
「後は、お任せ下さい」
「宜しく」
ウィルは軽い口調で返事を返すと、ユフィールと一緒に一階へ続く階段を降り建物の外へ出て行く。
これで、アルンとの約束は守れた。両親の泊まる場所を見付けたので、これで文句を言われることはない。それに自宅に両親がいない方が、ウィルも自由に遊びに行けるので便利だった。
「戻りますか」
「いや、まだ戻らない」
「何か、用事があるのですか?」
「そういうわけじゃないけど、早く戻ると両親に会う可能性があるから。遅い時間に、帰りたい」
式を途中で抜け出した時は、両親はまだやって来ていなかったが、時間を考えるとやって来ている可能性が高い。そしてアルンとセシリア、それにメイド達に迷惑を掛けているだろう。考えただけで頭痛を誘発し、気分が憂鬱になってくる。だからこそ、ゆっくりと帰りたいらしい。


