「次は、何処にあったかな」
「確か、街の外れにあったと思います」
「じゃあ、其処に行こう」
「はい」
一軒目の失敗を引き摺ることなく、二人は二軒目へ急ぐ。彼等に、休憩している時間はない。
寧ろ、休憩する時間が惜しかった。しかし、途中でトラブルが発生してしまう。何とユフィールが言っていた宿が、何処にも無かったのだ。だが、ユフィールの記憶ではこのあたりに、二軒目の宿があったという。
その言葉を信じ、ウィルは周囲に視線を走らせ宿を探していく。すると、真新しい外観の建物が目に付いた。そして視界の中に、ユフィールが言っていた宿の名前が書かれている看板が飛び込んでくる。
「あった」
「改装したのでしょうか」
「そうじゃないかな」
「だから、見付からなかったのですね」
「でも、見付かって良かったよ」
「はい。本当に、良かったです」
「さて、主人に部屋の状況を聞きに行かないと。しかし、二人部屋が空いていればいいんだけど……」
二人は中の様子を眺めつつ、宿で働く人間を探す。しかし客の姿は見られても、宿の人間が何処にもいない。ウィルはユフィールを出入り口の側で待っているように言うと、自分は宿の奥へ行く。
すると、二十代前半のエプロンを身に付けた女の人が廊下の角から姿を表した。勿論、ウィルと相手は同時にか細い悲鳴を上げてしまう。そして一拍置いた後、互いに噴出していた。
「えーっと、宿の人ですか?」
「あっ! もしかして、お客様ですか。し、失礼しました。今すぐに、お部屋に案内します」
「違う違う。部屋には泊まらないけど、予約をしたいんだ。二人用の部屋は、空いているかな」
「は、はい。お待ち下さい」
そう言い残すと、女は慌てて部屋の利用状況を確認しに行く。女は出入り口に設置されているカウンターの奥へ入っていくと、其処に置かれているノートをペラペラと捲っていく。すると、此方の宿も運良く部屋が空いているという。それも、角部屋という最高の場所だ。


