ユーダリル


 それぞれが準備し終わると、街へ宿屋探しに向かう。式の後のパーティーを途中で抜け出すことになるが、主役のアルンの許しを得ているので、今回は大丈夫。それに宿を見付けなかったら、何を言われるかわかったものではない。それに、自分へのとばっちりも免れない。

 敷地の外へ出る途中で数人のメイド達とすれ違うが、その全員に「何処へ行くのですか?」と、尋ねられる。しかしアルンの話を説明した瞬間、全員が「宿探し」の理由を察してくれた。

 それだけ、メイド達の間では例の両親が伝説と化しているのだ。勿論、いい印象を抱いていない。

「さてと……」

 ユーダリルは複数の島から形成されている土地だが、多くの人が密集して暮らしている島は少ない。それに比例して宿の数も多い方ではなく、早く探さないとどの宿も満員になってしまう。

 速度を求めるのならディオンに乗るのが一番だが、いかんせんディオンの身体は大きい。広い道に下りるのなら大丈夫だが、建物が密集している場所に下りると、邪魔になってしまう。

 それなら、地上を歩いて探した方がいい。また、ユフィールの安全を考えると此方の方が安心できる。

 今回は「両親の宿探し」に重点を置かないといけないのだが、心の何処かにユフィールのことを考えてしまう。このあたりは彼女に好意を抱いている証拠でもあり、大切にしている証でもあった。

「近い場所から行こうか」

「はい」

「この辺りだと……」

「右の橋を渡った街に、二軒あります」

「じゃあ、其処から行こう」

 ウィルの提案にユフィールは頷き返すと、二人は並んで橋を渡って行く。今日の天候は晴れで風の強さも安定していたが、橋の上に行くと急に風の強さが変化する。周囲に風を遮る物がないのが理由なのか、吹き上げてくる風にユフィールの身体は持っていかれそうになってしまう。

「大丈夫?」

「へ、平気です」

 慌てて手を伸ばし、ユフィールの手首を握る。そのお陰で、ユフィールは何とか転倒を免れた。彼女が怪我をしなかったことにホッとするウィルであったが、それ以上にホッとしていたのはユフィール。それは先程の風で、スカートが大きく捲り上がらなかったことだ。