ユーダリル


 だが、彼女は機嫌がいい。どうやらプロポーズが嬉しいのか、これくらい気にならないようだ。アルンはアルンで普段のブスっとした態度を取っているが、全身から幸せオーラが漂っている。

 これを長く浴びると、精神的に悪い。最初は特に気にしていなかったが、徐々に蝕んでくる。特にアルンのオーラは、半端ではない。やはりアルンという人物は、侮ってはいけない。

「行く」

「そうか」

「引き止めは……」

「してほしいのか?」

「い、いいよ」

 勿論、断る。

 アルンの性格で「絶対に引き止める」と考えていたが、どうやらその考えは持っていないらしい。

 先程「ウィルの面倒を――」と言いながら、今はこの態度。コロコロ変化する性格に、ウィルは苦笑いを浮かべていた。

 しかし引き止めないのなら、堂々と帰ることができる。ウィルはポンポンっとディオンの身体を叩くと、その場から立ち去るように促す。彼の態度に一瞬ディオンはキョトンっとしていたが、信頼している主人からの命令。可愛らしく首を縦に振ると、ポテポテと歩き出した。

 その後に続くウィル。彼は途中でディオンが方向転換しないように、両手で背中を押していく。今回真面目にウィルの命令に従っているのか、セシリアのもとへ戻ろうとはしない。

「偉い偉い」

 物分りがいいディオンに、また背中をポンポンっと叩く。プロポーズが成功したので、何処かへ逃げる必要はない。

 これで久し振りに、実家でゆっくりと寛ぐことができる。だが、その前に報告に行かないといけない。

 その人物というのは、ユフィール。セシリアの妹である。彼女も、姉とアルンの将来を心配している一人なので、プロポーズが成功したことを報告し、安心してもらわないといけない。

「ユフィール」

 ウィルはディオンを中庭で休ませた後建物の中へ入ると、メイドの休憩室へ行く。案の定、ユフィールは休憩室で休んでいた。突然のウィルの登場に、何か用事を頼みたいのか尋ねる。勿論、そのようなことでやって来たわけではない。ウィルは先程の出来事を早口で、話していった。