これが、ディオンなりの最善の方法。どうやら、二人に喧嘩をしないでほしいようだ。最初はセシリアの肩を持っていたディオンだが、彼女が激怒する姿に違う一面を見てしまったのか、このように威嚇した。
「な、何だ」
「喧嘩しているから」
「何!?」
「ディオンは、相手の感情を読み取るのが上手いからね。まあ、人によっては読み取れないけど」
彼が言う「読み取れない」というのは、ウィルの場合である。だが、他の人物は彼の説明のように普通に読み取れる。
だが、同時に勘違いも多い。
それでも今回は上手く読み取れたらしく、このように二人の喧嘩の仲裁に入ったのだった。
流石にディオンに止められると、これ以上の喧嘩はできない。二人は互いの顔を見合うと、どちらともなく謝る。それを聞いたウィルは、満面の笑みを作る。やはり、二人は仲がいいのが一番。
また、結婚前にギクシャクするのもいいものではない。それに喧嘩を続けていると、とばっちりがくる。
二人が完全に仲直りしたことを確認すると、ウィルは手を振りディオンを自分の側へ呼び寄せる。もうこれ以上、この場所に用はない。プロポーズも目撃したので、満足したからだ。
「じゃあ、兄貴」
「帰るのか?」
「用が済んだから。といっても、勝手にディオンが来ちゃったのが、そもそもの原因だけど」
「きちんと躾けろと……」
「躾けているよ。だから、仲裁に入ったんだ」
これに対し、アルンは返す言葉はなかった。今回の喧嘩が自分に火があると自覚しているのか、ポリポリと頬を掻く。しかしアルンに対しては、このような反応でもいい。問題は、セシリアの方。
彼女は怒っている素振りは見せていないが、ウィルは彼女が怒っているのではないかと思い身構える。
彼の反応に、セシリアはクスクスと笑う。どうやら彼女もディオンの行動を把握していたのだろう、流石周囲から一目置かれている人物。セシリアの態度に、ウィルはホッと胸を撫で下ろす。彼にしてみれば、実兄に怒られるよりセシリアに怒られる方が堪えるからだ。


