「そ、そうだな」
やはり、似た物兄弟。
絶対に本人は認めることはしないが、傍から見れば同じだ。
その時、庭の方向から叫び声が聞こえた。
あの声は、ウィル。ディオン専用の風呂を見て、感激しているようだ。
続いて、ドシドシという大地を踏みしめる音。
これは、ディオンが喜んでいるのだろう。
「気に入ったようですね」
「当たり前だ。気に入ってもらわないと困る」
「お優しい」
「ふん! 仕事をはじめるぞ」
「わかりました」
照れ隠しをしたつもりであったが、頬がほのかに赤く染まっていた。
アルンの過保護な弟想いの見たセシリアは、口許に笑みを浮かべると予定表を読み上げていった。
淡々とした口調で、読み上げられる予定。
アルンの仕事は思った以上に忙しく、毎日びっしりと予定が詰まっていた。
いつもの無表情で、それを聞いていくアルン。
ふと読み上げが月末に差し掛かった時、微かな反応を見せた。
その何気ない反応にセシリアは読み上げを止めると、質問を投げ掛ける。
「いかが致しましたか?」
「その日の予定だが、キャンセルだ」
「25日の予定ですか?」
「そうだ」
「何か不都合でも?」
「ウィルと食事に行く」
その突拍子もない理由に、セシリアは思わず間の抜けた声を発してしまう。
慌てて口を塞ぐが、向けられるアルンの視線が痛い。
久し振りに帰ってきた弟を、放したくないようだ。
「わ、悪いか」
「悪くはありません……何とかしてみます」
「そうしてくれ」
彼女ができないという大きな原因は、アルンの存在が大きく関係しているのではないかとセシリアは思ってしまう。
何かと理由をつけ二人の仲を裂く。
そうなると、妹の存在が心配になってしまう。
ユフィールはウィルのことが好きなので、心配の種は大きい。
「やっと、言うことを聞いてくれた。この機会を逃すわけにはいかない。色々と聞きたいことがある」


