ユーダリル


 両者の間に、明確な力関係が存在する。

 そうなると――

 天高く、ウィルの絶叫が響いた。


◇◆◇◆◇◆


 翌日――

 ウィルは、アルンのもとへ行く。

 無論、ウィルの顔色は非常に悪い。その表情は、処刑台へ連れて行かれる罪人のようだった。しかし、利子を無く金を借りることができるのはアルンしかいない。一応、兄弟同士。

 普段は悪魔のような一面を出すのだが、このような面では天使の心を出す。だが、怖いものは怖い。ウィルは心の中でアルンの機嫌がいいことと、セシリアが側にいることを願った。

 兄弟の間柄ということで、ノックをせずに入室する。すると、真面目に仕事をしているアルンの姿が、存在した。どうやら、セシリアに促されて仕事を行っているのだろう。大量の書類と、格闘していた。

「……兄貴」

「うん? どうした」

「セシリアさんは?」

「どうして、その名前を言う」

 どの人物も、まず「セシリア」の名前を尋ねる。それだけ、彼女は信頼感が高い。一方アルンの信頼度は、全く無い。あからさまの差別に、アルンの眉が動く。そして、仕事の手を止めた。

「い、いけない?」

「いや、わかっている」

 アルン自身、周囲がどのような評価を下しているのかわかっている。わかっているからこそ、今日は大人しい。日頃の刺々しい一面が存在しないアルンに、ウィルは首を傾げてしまう。しかし、今回は都合がいい。弱気になっている時、反撃を食らう可能性が低いからだ。

「兄貴、お願いが……」

「何だ」

 ウィルがこのように頼みごとをするのは、珍しいこと。何よりウィルは、アルンを避けることが多い。そのウィルが、頼ってきてくれた。アルンはサインを書くのに使用していたペンを回しつつ、言葉を待つ。そして本題に入った瞬間、回していたペンが書類の上に落ちた。