流石、新婚当時の熱々夫婦。語る言葉にも異様な熱気が含まれ、このような状況であろうと平気で惚気まくる。お陰でアルンとセシリアの精神的なダメージは、計り知れなかった。
「まだ、難しかったかしら?」
「結婚をすれば、理解するさ」
「そうね。最初は、そうだったもの。でも、今は理解しているわ。あなたの好みは、わかるもの」
「それは、嬉しいな」
突如開始された、二人の惚気劇場。アルンは額に汗を滲ませながら、それが終わるのを待つ。しかしかなりの精神ダメージを食らったのだろう、今にも倒れそうな雰囲気であった。
今回の件で、この夫婦に「愛を語らせてはいけない」と学んだアルンであったが、それを止めることはできなかった。もし相手が両親でなければ、いつもの圧力で強制的に止めていたに違いない。
今回は、相手が悪すぎた。セシリアに指摘されたように、両親に優しくしないといけない。
このように所構わず惚気を行う夫婦に、同情や愛情が湧くことは絶対にあり得ない。故に、アルンは反発してしまう。凄いとしか言いようのない二人に、セシリアは言葉をかけられないでいた。
そして動揺まではいかないが、アルンと結婚すれば将来この二人が義理の両親になることに、不安を覚えてしまう。
上手く付き合えるか。
セシリアの我慢強さなら、乗り切ることができるだろう。問題は、ユフィールの方にある。
ウィルと付き合っているので、いつかは対面しないといけないだろうが、このパワーで迫られることになるだろう。
ユフィールは、セシリアとは正反対の大人しい性格の持ち主。下手をすれば、泣いてしまう可能性が高い。
(大丈夫かしら)
今まで、アルンだけを気にしていた。しかし今回の件で、両親のことも考えなければいけなくなってしまう。恋愛に関しての障害はないに等しいが、それ以外の事柄に問題がある。
目の前で繰り広げられている親子喧嘩。いつもなら圧力をかけて楽しんでいるアルンが、負けている。
これはこれで愉快な光景であったが、セシリアにしてみたら心配で落ち着かない。だが、止めようにも止められない。


