ユーダリル


 それは結婚の話であったが、主となる人物が異なった。そう今回の話のネタは「ウィルの結婚相手」ということであった。

「ウィルは、結婚しません」

「そのようなことはないわ」

「何故、そう言い切れるのですか?」

「メイド達が言っていたわ」

 その言葉に、アルンの身体が震える。だがそれはアルンだけではなく、セシリアも同じであった。メイド達の言葉――彼女達は、ウィルとユフィールを一緒にしたいと思っている。

 だからこそ誰もいなくなった時に、二人の関係を話したのだろう。ウィルを好きだという女性の存在はクレアにとっては喜ばしいことであったらしく、二人の関係を聞き出そうとする。しかし、聞いた相手が悪すぎた。アルンはユフィールを抹殺――いや、存在を疎ましく思っていた。

 可能であれば、ユフィールを首にしているだろう。可愛い弟を奪う存在は何人たりとも許さず、アルンの心情としては一生独身を貫いてほしいと考えているが、それは儚い理想であった。

 現にこのように言われているのだから、諦めないといけない。だが、アルンは悪足掻きをする。これこそ彼の悪い面であり、これにより多くの人間が泣かされ、職を失ったという。

「何故、いけないの?」

「まだ、若いです」

「若くはないわよ。私の知り合いの子供なんて、十代で結婚をしたそうよ。そうでしたわね、あなた」

「確か、孫が生まれたそうだ」

「ほら、聞いたでしょ」

「親子三代で、仲良くなっている」

 両親にしてみたら、ユフィールの存在は両手を上げて喜ぶべき事柄であった。だがアルンにしてみたら、これ以上の苦痛と屈辱はない。セシリアの妹という意味で、何とか堪えている。これが縁もゆかりも無い存在であったら、アルンは間違いなく強行に走っていただろう。

「ウィルは、恋愛に興味がないそう」

「あら、そうなの?」

「ですから、結婚は早いです」

「大丈夫よ。恋は、感じるものよ」

 意味不明な言葉に、アルンは間延びした声を発していた。それはセシリアも同じで、思わず視線を横に逸らしてしまう。