好き嫌いがハッキリとしているのは、性格を把握しやすい。だがその反面、中間がないということはとても恐ろしい。どちらに転んでも極端な反応が返ってくるので、必ずアルン以外が泣く。
しかしそれに気付かないアルンは、セシリアに文句を言っていく。すると堪りかねたセシリアが、とうとう怒り出してしまった。滅多に怒りを面に出さないセシリアに、アルンは目を白黒させてしまう。
そして震えた声音で言葉を投げ掛けるが、セシリアが何か言ってくることはなかった。ただ目を細め、アルンを睨み付ける。無言の圧力をアルンに与えていき、今までの行いを償わせようとしていた。このような時しか、アルンの性格を改善できないので、力が入ってしまう。
セシリアの急な変化にアルンは椅子から腰を上げると、部屋から出て行こうとする。その無責任とも取れる行動に、セシリアも同じように動く。そして扉の前に立つと、アルンの逃亡を妨害する。
互いの間に、会話など存在しない。ただアルンはセシリアの隙を狙い、逃げようとする。だが、セシリアはそれを阻止しようと、アルンの動きに神経を集中させた。まさに、無言の戦い。
刹那、一瞬の隙をつきアルンの手が動くが、それはセシリアにはお見通しだった。扉を開ける寸前で腕を掴み、徐々に力を込めていく。その握力は、女性とは思えない強さがあった。
「逃しません」
「それは、困るな」
「アルン様の為です」
セシリアの意思の強さに、諦めた素振りを見せる。しかしそれは、あくまでも素振りであり、隙が発見されたら再び動く気でいた。
だから、互いに気が抜けない。
セシリアは掴んでいた手を離すと、アルンの身体を回転させ背中を押す。そして、椅子に腰掛けるように促す。
「お話は、終わっていません」
「いや、終わったよ」
「いえ、まだです」
何事もキビキビとした態度を取るセシリアであったが、今回は別の意味で圧力をかけてくる。いつもなら、アルンが圧力をかける立場であろう。しかし立場が逆転した途端、圧力の意味を知る。
これにより圧力の意味を理解したアルンは――と、他の者達は期待してしまうが、残念ながらこの点に関しての学習能力は低い。今回はセシリアが怖いのであって、それ以外のことは関係ない。


