「お待ち下さい」
惚気をはじめた両親に嫌気が差したのか、アルンは椅子から腰を上げる。そしてフンっと鼻を鳴らすと、部屋から出て行ってしまう。だが息子がそのような態度を取ろうとも、両親は同じ惚気を見せていた。
その間に立つセシリアは、どちらに味方をしていいのか迷ってしまう。日頃の関係を考えればこの場合、アルンに味方をするべきだろう。だが、両親の立場も尊重しなければいけない。
両者の間に立って、板挟み状態。困った様子を見せるセシリアに、メイド達が助け舟を出す。
「後を追って下さい。この場は、私達が何とかいたしますので。アルン様は、セシリア様がいなければ駄目ですから」
「御免なさい」
「いえ、アルン様をよろしくお願いします」
言葉ではそのように言っているが、内心は異なっていた。本当のところは、アルンの機嫌を直してほしいからだ。このような状況になってしまうと、とばっちりがメイド達に及ぶ。
アルンの秘書という立場だけあって、セシリアはそのことをわかっていた。わかっていたからこそ、特に否定の言葉も言わずにアルンの後を追う。そして残ったメイド達は、両親の相手をした。
しかしこれも、作戦の内であった。アルンがいなければ、好き勝手なことを言える。それも、ウィルの恋人に関して。二人を一緒にするのなら、面白いものを見出しているメイド達。
時として主人を欺く。
そして、面白おかしく語っていった。
両親の惚気に嫌気が差したアルンは、部屋に閉じ篭っていた。セシリアはその部屋に入ると、いつもの淡々とした声音で言葉を発する。その言葉は容赦なく、一言一言がアルンの身体に突き刺さった。
「そこまで言わなくとも」
「いえ、言わせて頂きます」
「あれは、向こうが……」
「仰ることは、わからなくもありません。ですが、あの方々はアルン様のご両親です。ですので、あのような態度はいけません」
セシリアは、アルンの気持ちを理解していた。理解しているからこそ、不機嫌な態度を取ることを嫌う。


