「なります!」
「短気は損気よ」
「誰の所為ですか」
大声で叫んだ所為で、肩で息をしていた。十代のウィルを、誰かに取られたくない。それがアルンの本心であり、何より自分のもとから離れてしまうのが悲しかった。
しかし、いつかは結婚しないといけない。そのことを淡々とした声音で説明していくトラビスであったが、アルンは聞いていない。それどころか、反論を述べていく。その涙ぐましい反応に、再び周囲から笑いがもれた。
「アルンちゃんもいずれは結婚をするのだから、ウィルちゃんの結婚を認めなさい。束縛は、いけないわよ」
「その前に、恋人はいるのか」
「そうよね。で、いるのかしら?」
その言葉に、メイド達が一斉に反応を見せた。それは危険と判断したわけではなく、チャンスが到来したと思ったからだ。ウィルの両親の前で「恋人はいる」と宣言すれば、この明るいノリに任せてしまえばいいだろう。そして上手く運べば、ウィルとユフィールの仲は一気に進展する。
メイド達の視線が、セシリアに集まった。この場合、メイドが口出しするのは立場的に失礼だ。それにアルンの恋人として気に入られたセシリアなら、多少のことは大目に見てくれるだろう。
セシリアもメイド達の言いたいことを理解していたが、なかなか口に出すことはできない。その大きな要因として、日頃の冷静さを忘れて両親と口論をはじめたアルンに存在した。
「個人的に、恋人がいてほしいわ」
「可愛い子がいいな」
「あら、浮気」
「それはない。お前、一筋だ」
「そう、嬉しいわ」
「決まっていることを聞くな」
「悪かったわ」
急にはじまった惚気に、アルンは怒りに身体が震えていた。紅茶を飲もうとティーカップに手を伸ばそうとしたが、取っ手を掴むどころかカップを倒してしまう。受け皿に広がる赤茶色の液体。メイド達は慌てて掃除に取り掛かろうと動くも、両親は動じず惚気るだけ。
「後を頼む」
「アルン様!」
「不愉快だ」


