ユーダリル


「執事を、泣かせないでもらえますか」

「泣かせていないわよ」

「勝手に泣いた」

 それは、正しい意見だろう。しかしその原因となったのは、間違いなくこの二人にあった。

 そもそも帰って来なければ、このような事件に発展しなかったと思われる。だが、二人は気付いていない。もし気付いていたら、他人に迷惑を掛けないないと思われるが、期待はできない。

「ところで、ウィルちゃんは?」

「ウィルは、病気です」

「あら、大変。お見舞いに、行かないといけないわ。どのような病気に、なってしまったの?」

「行かなくて、結構です」

「あら、何で」

「気にしなくて、いいのです」

 ウィルのことが絡むと、アルンは厳しくなる。たとえ相手が両親であろうと、天秤がウィル以外に傾くことはない。それだけ「ウィルを守る」という使命に燃え、何が何でも守ろうとする。

「そんなことを言うな。ウィルも息子の一人だ。心配して、当たり前だぞ。隠すことはない」

「隠します」

「まあ、寂しい」

「そのような顔をなされても、教えることはできませんから。さあ、行きましょう。立ち話をしていると、メイド達の邪魔になってしまいます。それに、このようなことで帰ってきたのではないでしょう」

「あら、怖い」

「怖くはありません。これで、普通です。一体、誰の責任だと思っているのですか。少しは、自覚して下さい」

 それは、ぶっきらぼうな台詞であった。その中には小さなトゲが混じり、両親を突き刺していくが、二人はそのことに気付いていない。ただ「息子の我儘」と感じ取り、笑っているだけ。

 まさに、鈍感すぎる性格。このような性格だからこそ、商売を行えていたのだろう。アルン同様に、敵が多かった父親のトラビス。そしてそれを支えていた母親のクレアは、様々な苦労をしてきに違いない。

 これも苦労の反動なのだろう、クレアも鈍感になってしまった。お陰で、子供達の苦労が耐えない。