「素敵なところ」この言葉は、信じられない。これが本当なら、天変地異の前触れだろう。
「……奇特な人だ」
「お姉ちゃんは、美人だから。だから、アルン様に好かれたのだと思います。羨ましいです」
ポツリと呟いたそれは、ユフィールの本音であった。セシリアは、バリバリと仕事をこなす才女。そして顔は綺麗に整っており、スタイルも良い。更に品があり、何より凛とした態度が素晴らしかった。
自分に持っていない物を全て持っている姉。
今までそれに対して羨ましいという感情を持ってはいなかったが、姉が結婚するかもしれないとわかった途端、考えが変わってしまった。羨ましいものは羨ましい。何より、アルンに愛されていることは大きい。
ウィルは残念ながら期待することはできず、この先どのように転ぶかもわかっていない。それが、心配の種である。
「ユフィールは、可愛いと思うけど」
「そ、そうでしょうか」
「働いているメイド達の中では、そのように思うね。淑やかな雰囲気があるし、何より大人しいしね。それと、料理の腕も上がってきたと思うよ。以前の料理より、美味かったから」
「……有難う……ございます」
突然の告白に、ユフィールの顔は真っ赤に染まった。そして俯き、視線を合わすのが恥ずかしくなってしまう。急な変化にウィルは首を傾げると「風邪をひいたのか」と、尋ねる。
「ち、違います」
「風邪がうつったのかと思った」
「わ、私は……元気です」
「うつしたら、メイド達に言われてしまうよ。あのように見えて、煩いから。上下関係なんて、ないし」
世話をしてもらっているユフィールにうつしたとなれば、メイド達が黙っていないだろう。
だが、それが取り越し苦労だとは気付いていない。何よりこの計画を練ったのは、メイド達なのだから。その時、ウィルはあることを思い出す。それはアルンに関係することであり、とても重要なことであった。そう、アルンとセシリアの関係だ。両親にこのことを話したら、何と思うか。
珍しく、緊張するアルンを見ることができるだろう、後々で愚痴を言われるのはウィルだ。


