「寂しいのですか?」
「な、何を言う」
どうやら、図星であった。
アルンとウィルの両親は、この屋敷にはいない。
今はユーダリルを離れ、二人で暮らしている。
新婚そのままの熱々ぶりで、帰ってきては息子二人に呆れられているほど。
それにこの年齢で両親にベッタリはおかしいので、その反動がウィルに向かう。
「旦那様と奥様は年に数回はお帰りになられますが、数は多くありません。ウィル様はウィル様でお屋敷を離れ、別の場所で悠々自適に暮らしております。実質、このお屋敷にはアルン様お一人。ウィル様を定期的にお呼びになられるのは、寂しさを紛わす為なのでしょうか?」
セシリアの鋭い読みは、的確に正解を導き出していく。
正直にいうと、それが正解であった。
ウィルがトレジャーハンターになると言い出し、家から出たのは今から数年前。
それ以来アルンが呼び出しをしない限り、家に戻らなくなってしまった。
それにより、寂しさが募る。
だから、今の現状を生み出していた。
「ま、まあそうだな」
「やはり、そうでしたか」
「悪いか!」
「別に、悪くはありません」
一見、アルンが仕切っているように見えなくもないが、心の底ではウィルのことを心配し大事に思っている。
歳の離れた、可愛い弟。
様々なことを言いながら資金提供を続ける理由は、目の届く範囲にいてほしいからだ。
そして厳しく当たるのは、愛情の裏返しだという。
正直そのことを話せばいいのだが、照れというものがあった。
それにウィルに話したら爆笑され、立場が逆転してしまう。
弟の前では“威厳ある兄”でいたいという、妙に見栄っ張りな性格の持ち主。
それはそれで可愛らしいと思うセシリアであったが、全く強情であった。
「それでしたら、嫌われないようにいたしませんと。アルン様の行為は、いつも裏目に出ています」
「それが、難しい」
「ウィル様を怪我させたのは、誰でしょうか? もし命を落とされたら、どうするのですか」
「わかっている」
「本当なのですか?」
「ウィルには、死んでほしくない。誰が、弟の死を望むというんだ。あいつは、あれで可愛い」


