「お前も寝ろ」

「え、…どうしよう」

「知らねぇ。…起こすな」

「……了解です」


その後、完全に寝息を立てて爆睡する矢沢君を見ると、本当に気持ち良さそうな寝顔をしていて、思わずこっちまで眠気に誘われてしまいそうになる。


「……ふあ、」

欠伸が零れ、電車の揺れも相まった所為でうつらうつらとしてきた意識の中、突然襲ってきた睡魔になんて勝てるはずもなく、あたしは呆気なく夢の中へと落ちて行ってしまった。




目を閉じると、目の前にはあたしの大好きな久瀬先輩が立っていた。

あたしがそんな久瀬先輩に驚いていると、久瀬先輩はニッコリと笑って、あたしの方へ少しずつ近づいて来る。


「心ちゃん、起きて」

「え?」

何言ってるんだろうなんて思いつつ首をかしげると、



「――――おい、」


いきなり久瀬先輩とは正反対の低い声があたしの耳に入って来た。



「―――――おい。おい、起きろ」