「あ、雨止んでる」

学校を出ると、奇跡的にさっきまで降っていた雨がすっかりと止んでいた。

「雨が止んでるうちに帰るぞ」と言って来た矢沢君があたしの前をスタスタと歩いて、置いて行かれないようにと小走りで矢沢君の後に続く。



「無事に駅着いたけど、また振り出しそうだね」

「ああ。降りだすだろうな」

「…雨って結構好きだけど、自転車こぎながら傘差すのは面倒臭い」

「……何だそれ」

そんな至ってどうでも良い話をしていると、聞き慣れたアナウンスと共に電車がやって来た。


「俺寝るから、お前が降りる駅が近付いてきたら一回起こせ」

「え?うん。分かった」

電車に乗り込んで何とか空いている席を確保すると、いきなり寝る態勢に入った矢沢君が小さい声でそう言った。あたしがそれに返事を返すと、矢沢君は満足したかのようにゆっくりと目を閉じた。

本当に寝ちゃった、なんて思いながら、あたしは矢沢君の寝顔をじっと見つめてみる。

「………」

(…あ、結構まつ毛長い)

そんな事を思いながら、まじまじと矢沢君の顔を観察していると、

「……ぅお…っ」

いきなり頬を親指と薬指で軽く掴まれてしまった。


「……見てんじゃねぇよ」

「す、すすみませ」