その後、学校に到着して教室に向かうと、不意に耳にした事のある女の猫なで声がまたこっそりと聞こえてきた。

「シン、おはよー」

「シンー、今日早いけどどうしたのー?」

その聞き覚えのある名前に体がビクッとして、廊下側の窓際にそっと目を向ける。すると、不意にこっちへ目を向けた矢沢君と必然的に目が合ってしまい、あたしは数秒も待てずにすばやく矢沢君から目を逸らしてしまった。



「ねぇ、シン…―――」

「……うっせえな。俺に話掛けんな」

「ちょっ、シン…!」

矢沢君は後ろを付いて来ていた女達に低い声でそれだけ吐き捨てると、何もなかったかのようにスタスタと長い廊下を歩いて何処かへ行ってしまった。



その後。ゆっくりと流れる午前の授業は全て右から入って左へ抜けていくような感じだった。
ようやく4時間目の英語が終わり昼休みに入ると、不意にあたしの携帯が―――ブブブと鳴り響いた。

携帯のディスプレイを確認すると受信メールが一件届いていて、恐る恐る受信先を確認すると、そこにはあたしの予想を裏切らならない、まさに予想的中の名前がフルネームで表示されてあった。


『今すぐ屋上来い。』

「矢沢心」と受信先に表示された本文には、それだけ簡素に書かれてあった。