部屋の前まで戻って来てガチャリと扉を開けると、何故かいきなりぶわっと耳を塞ぎたくなるような雑音がガンガンと耳に入って来た。
何事?なんて思っていると、速水先輩が騒ぎまくっていてロックとか言う激しい歌を一人で熱唱していた。
「あ、心ちゃん。おかえり。はいこれジュース」
「あ、ありがとうございます」
久瀬先輩の透き通った声で「心ちゃん」なんて下の名前で呼ばれると、どうしようもなく心の奥底がキュンとする。
まるでキューピッドのハートの矢が、グサッと胸に突き刺さったみたいだ。
「あっ、心ちん心ちん!今度は心ちんが歌ってよー」
「えっ!?」
いきなり騒がしいロックを歌い終わった速水先輩がマイクを持ってあたしにそう言って来た。
いつのまにか「心ちん」と呼ばれていることにはこの際触れないでおく。
「いや、あたしは…、音痴なんで」
「え?そんな感じには見えないけどなあ」
速水先輩がニコニコしながらそう言うと、何故か隣に座る由希がじとっとした目であたしを睨んで来た。
「あんたねぇー、あたしより歌上手いくせに何言ってんのよー嫌味に聞こえるわ」
「ちょ、由希!」

