「君、こんなところで何してるの?高校生?」
「危ないよー。こんなところで一人で居たら」
気分が悪くて頭がボーっとする所為か、相手の声もあまり耳に入って来ない。目の前のチャラチャラした二人組と目を合わせないようになるべく下を向きながら黙っていると、二人組は全く引く気がないのか、またもや声を掛けて来る。
「黙ってないでさー。暇なら俺等と遊ぼうよ」
「うん。楽しいよー」
笑顔でそう言って来る男たちが怖くて、あたしはちょっとだけ体を後ろへ引いた。
「……いや。あの…、人を待ってるんで…」
私がようやく声を出すと、ようやく喋ったねーなんて言いながらもっと詰め寄ってくる。
「へぇ。待ってるってお友達?」
「一人君だけ置いてくなんて、どうかしてるねー」
「……いや、あの、……友達、じゃなくて…」
私が小さな声でそう言うと、相手はちょっと面白くなさそうに「え。もしかして彼氏?」なんて聞いてくる。
「……えっと」
彼氏…?いや、あたしは矢沢君のことを彼氏だなんて思った事は一度もないけれど、今のこの最悪な状況を冷静に考えてみると、ここは無難に彼氏だと言っておいた方が自分の身の為かもしれないと思い、不本意だけれど小さく口を開いた。
「…はい、彼氏…待ってるんで…」
「男かあ。男居んのかあ。可愛いもんね」
「ちぇっ。…男持ちかよ」
面白くなさそうにそう言う二人にあたしは少しだけ小さな期待を抱いたのだが、次の男の一言でいとも簡単にさっきの淡い期待は砕け散ってしまった。
「……でもさあ。彼氏、戻って来ないよね?」
「………っ、」
あたしがゾクリと肩を震わすと、目の前の二人組はひそかに口角を持ち上げて、ニヤリと薄く笑った。

