これが、あたしの彼氏です。【完】




(…矢沢君、何処まで買いに行ってくれたんだろう)

自販機なんてこの館内にそう幾つもあるとは思えないし、それに何と言ってもこの人混みだと前へ進むのも一苦労だろう。見るからに人混みが苦手そうな雰囲気だったのに、あたしなんかのためにあの人の群れの中へと戻っていってしまった。

「………」

よくよく考えて、今日は朝から矢沢君に迷惑しか掛けていない気がする。何だか申し訳ない気持ちでいっぱいで、また重たい溜め息が一つ零れた。


もうこのままゆっくりと目を閉じて、矢沢君が戻って来るのを静かに待っていようと思っていたのだが―――――、


そんなあたしの考えは、ほんの一瞬で水の泡と化してしまった。





「……あれ?こんなところに、可愛い子居んじゃん」

「おお。ラッキー」


「…………っ!」

見るからにチャラチャラしてそうな男二人組が、あたしを見つけるなりズカズカとこっちへ足を進めてきたのだ。