「………っ」
走って走って、涙が溢れ続けるのも忘れて走り続けた。
矢沢君は最後まで何も言ってくれなくて、まるであたしが放った言葉が正解だとでも言うようにキュッと口を閉じていた。
「……うっ」
無数に流れる涙と、ズキズキと痛み続ける心臓。
その原点はきっと、矢沢君に対しての怒りと、絢さんに対しての嫉妬だ―――。
「………っ」
その自分の正直な心で、気付くべきだったのかもしれない。
ドクンと心臓が揺れる度に、ズキンと心臓が痛む度に、少しでもそうだったんじゃないかって、ずっと前に勘付いておくべきだったのかもしれない。
「………うっ」
だって、まさかあたしが、こんな感情を持つだなんて思ってもみなかったから―――。
「……矢沢君…っ」
――――どうしよう。
――――あたし、矢沢君に、―――――恋をしてしまっている。
End.
