「――でも、お前が気にする事なんて一つもねぇから。絢とは何もねぇから。……さっさと忘れろ」

「…………」


――――正直、矢沢君は何を言っているんだろうと思った。仕舞いには沸々と怒りが込み上げて来て、ギュッと拳を握りしめる。


何もないわけないじゃないか。

気にしないような事じゃないじゃないか。

――――そんな簡単に、忘れられるわけないじゃないか。


「………矢沢君、嘘付かないでよ…」

「は?」

「あたし、絢さんの事知ってるんだよ」

「……あ?」

「……蒼稀君に、教えてもらったんだよ…」

「………」

あたしが小さな声でそう言い返すと、矢沢君は一瞬目を大きく見開いて、


「……てめ…っ、何勝手な事してんだ…!!」


大きな声で怒鳴って来た。