これが、あたしの彼氏です。【完】



…………あたし、此処へ来た意味あったんだろうか。


「…………」

「…………」

「…………」

さっきから携帯を探る機械音だけが、あたしの耳にうるさいほど連呼する。矢沢君も蒼稀君も携帯片手に、ただパンを黙々と食べているだけ。
あたしはと言うと、そんな矢沢君の隣で由希と食べるはずだった弁当をチマチマと口に運んでいる。
心なしか、美味しいはずの弁当も少しばかり不味く感じてしまう。

(…もう教室に帰ってもいいかな)

そんな事を思いつつ、あたしは近くで携帯を弄りながらお昼ご飯を食べている二人にそっと目を向けた。


二人の印象は、あたしが見る限り不良一色喧嘩上等な雰囲気を大きく感じる。
憎たらしい矢沢君は、茶色く染められた髪に、両耳にシルバーピアスが二つずつ付いている。
制服もまさに不良をイメージさせるようなラフな着こなしで、身に付けている様々なアクセサリーは何故か全てシルバーで統一されている。
相手を一瞬で黙らせてしまうような鋭い目に、整った顔立ち。周りから見れば矢沢君はさぞかし、イケメン面という部類に入るんだろう。


それから蒼稀君は、矢沢君のクール兼素っ気ないイメージとは逆転して、人懐っこい可愛い猫みたいな印象を強く受ける。
矢沢君の茶髪より、もっと薄く染められたミルクティーのような栗色の髪をしていて、その髪はメンズ用のカチューシャで前髪を上げて、サイドに髪を流している。
目は二重で、顔も小顔。身長もそれなりに小さい。制服は矢沢君と同じで着崩れた格好。アクセサリーは見る限り、何故か蒼稀君は全て金色で統一されている。
蒼稀君も蒼稀君で、矢沢君に劣らないくらいのイケメン面だと思う。

これは二人揃って憎たらしいくらいにモテるんだろうなっていう結論に至って、その状況を想像すると少しだけ顔がピクリと引きつった。