「心、一緒に飯食うぞ」
「………え、」
過酷だった4時間目の数学がやっと終わった昼休み、由希と一緒にお昼を食べようと思っていたら突然、あの矢沢君があたしのクラスの前で堂々とした態度で構えていた。やはり、昨日の事は全て夢ではなかったらしい。
「……いや。あの、あたし…由希と」
「………コイツ、借りてくぞ」
「えっ、ちょっ、矢沢君…!ご、ごめん…由希」
矢沢君はあたしの弁当と腕を強引に引っ張ると、教室をさっさと出て行ってしまった。一緒にご飯を食べる予定だった由希に頭を下げつつ謝ると、由希は「良いよ、良いよ」と笑顔でそう言ってくれた。
何でお昼まで、矢沢君と一緒に居なくちゃいけないんだろう。
その後、あたしはひと気が全くない屋上へと連れて行かされ、気が進まないまま矢沢君が屋上の扉をガチャリと開ける。
「おー、心ちゃん、昨日振り」
「あ、」
すると、昨日会ったばかりの蒼稀君がこっちに手を振って「こっちこっち」と手招きしてきた。
「そ、蒼稀君…ここの学校だったんだ」
「え!酷ぇ。俺ここの1組だから」
「コイツも昨日、同じ制服着てたっつーの」
「あ。そ、そうだったっけ…」
正直、昨日は色々あって衝撃的だったからそんなことまで覚えていないのが本音だ。
「ま。仲良くお昼食べよー」
そう言って、ニコニコ笑いながらパンを頬張る蒼稀君を見て、あたしは単純に軽い男だな…と思った。

